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2010年5月

2010年5月16日 (日)

映画を浴びて 2010年5月号

「ハート・ロッカー」  佐野なおみ

「時限爆弾だったらそんな危険冒さなくても、人を避難させて爆発させてしまえばいいのに」
「うん。でも、それが彼らの任務だから」 
「ハート.ロッカー」は、アカデミー賞を取ったので日本の多くの映画館で上映されることになった。爆発物処理は危険なので、遠隔操作ロボットなるものが活躍することもあるのだが、がたがたの路面ではロボットを真っ直ぐに進ませることさえ難しい。ということで、起爆機能解除の任務に就いた兵士は最も死に近いところにいることになる。息苦しい防護服に身を包んでユラユラと死地に赴くシーンがこの作品のテーマだ。  私たちはイラク戦争の状況を報道で知る。
各地で起きている自爆テロにしても、耳にするだけで生々しく痛ましいものではあるが、私たちは爆風の中の阿鼻叫喚を知ることはできない。ニュース映像はしょせん事後の状況でしかないし、しかも検閲済みでもある。
この作品は、ジャーナリストのマーク・ポールが イラクに駐留しているアメリカ陸軍爆発物処理班に潜り込んで取材した実話がベース、六年前のバグダット。閉塞感のある乾燥した土地、次々と現れる爆弾、反乱軍の襲撃、身体に爆弾を埋め込まれる術中に死んだ少年にたかる蠅、赤黒く乾いた血糊。淡々と通算873個もの爆弾を処理してきたジェームスが、怒りにかられて任務以外の行動に走る場面では、手持ちカメラのぶれた感じと暗闇がジェームスの狂気と苦悩をうまく伝えていると私は思ったのだが、見る人によっては見づらくて鬱陶しいと感じてしまうのかもしれない。タフなジェームスではあるが、その心情はうねうねとして暗いのだ。いつのまにか38日間の任務終了を待ちわびる兵士に感情移入している自分に気づくのだが、任務を終えて元の生活に戻ろうとしても戻りきれないジェームスの姿を見てまた、映像を見ているだけの私と現場にいる兵士との違いに気づかされたりもするのだ。
ハート・ロッカーは兵隊用語で棺桶をあらわす。任期が終わり家族と暮らし始めても居場所を見つけられないジェームス。本来は行きたくないはずであろうバグダットに再び赴いてしまうジェームスは人間が普通に持ちあわせているはずの豊かな感情を失ってしまっているのだ。息苦しく防護服に身を包んでユラユラと起爆装置解除へと向かうラストシーンは繰り返しの効果もあって、私たちをなんともやるせない気分にさせる。  何が彼らをつき動かすのか、爆発物をつくり続ける人たちと、処理し続ける人たち。どちらも死と隣り合わせの不毛地帯に身を置いていることに変わりはない。

新・身も心も 36 2010年5月号

『去年マリエンバートで』
L'année dernière à Marienbad 61年
 
 厳しかった冬の寒さもようやく和らぎ、暖かい春の陽ざしに誘われて東京・京都へ足を伸ばしあれこれ観てきました――。
3月13日『森村泰昌 なにものかへのレクイエム』(東京都写真美術館) パロディを突き抜けてアートになった不思議な美しさとユーモア。
同日『エビータ』(自由劇場) エビータ役の秋夢子は力強い歌唱が圧巻、チェ役芝清道は相変わらず舌を巻くほど上手い。ティム・ライス&ロイド・ウェッバーによるまぎれもない傑作なのだが、今回の浅利演出はどことなくこじんまりした印象を与えてしまうのは何故?
同日『上海バンスキング』(シアターコクーン) 初演1979年、再演は1994年以来16年振りという伝説の舞台にようやく相まみえることが叶いました。役者自らが楽器を奏するライブ感と、祭りの後の寂寥感。∧午前十時の映画祭∨じゃないが、優れた芝居をこうやって∧復活∨させてくれた企画に拍手!
3月14日『去年マリエンバートで』(シアター・イメージフォーラム) 後述
同日『ホール・オペラ「コジ・ファン・トゥッテ」』(サントリーホール) サントリーホールという最高の音響空間でオペラを味わうこの贅沢。唄・演奏はこの上なく豊饒に響き、舞台上の制約を逆手に取った演出(黒と白のアルルカン等)や装置も斬新。嗚呼、オペラを楽しむってこういうことだったのね!モーツァルトの音楽の底知れぬ魅力をとことん堪能。
3月15日『ニューヨーク、アイ・ラブ・ユー』(シャンテシネ1) 11人の監督によるオムニバス映画ならぬ∧連作短編∨なので、話の芯が無い分ちょっと散漫。
同日『ハート・ロッカー』(スカラ座)
イラク戦争が素材ではありますが、戦争映画ではなくハイパーリアルな∧戦場映画∨。望遠レンズと手持ちカメラを駆使したK・ビグローの演出は、スリリングかつハイテンション。臨場感(死の恐怖)に絞り込んだ作劇術の勝利。
3月27日『チャップリンの独裁者』(TOHOシネマズ二条) 『黄金狂時代』『街の灯』等のサイレント期傑作に比して、幾分綻びの見られる点もある。しかし体技を活かした芸と、ヒトラーが象徴する∧独裁者=全体主義∨を徹底的に糾弾する映画作家姿勢(その頂点がラストの大演説シーン)には、やはり圧倒される。
同日『プリンセスと魔法のキス』(TOHOシネマズ二条) 字幕版で観るとヒロインの南部訛や蛍のフランス語訛が楽しめるし、ミュージカル・ナンバーの迫力も倍増。CGアニメ以前のディズニー・セルアニメの興趣と味わいが見事復活!
というわけで今回はこの中から、1983年8月に東京・有楽シネマで観て以来27年ぶりの再見となった『去年マリエンバート』を取り上げます。
*          *
主人公の男Xは、女Aと再会する。Xは去年マリエンバートで会ったと語りかけるのだが、Aは記憶していない。しかし、AはXの話に耳を傾けているうちに、おぼろげな記憶を取り戻していく。Aの夫であるMは、「去年マリエンバートで」実際に何が起こったのか知っているのだが・・・。
現実と夢想の境を彷徨する脚本。フォトジェニックな映像(計算され尽くした構図、カメラの滑らかな動き、明暗の強いコントラスト)。不気味な通奏低音を終始奏でるオルガン。魔術的モンタージュ。男と女の愛の迷宮。
初めて観た時、サッパリ分からないものの、何か物凄いものに遭遇したという衝撃を受けました。再見して、やはり本作は映画にしか出来ない映像芸術の頂点であることを確信しました。『81/2』『2001年宇宙の旅』と肩を並べる、世界映画史上に燦然と輝く金字塔です。

おとうと

2010年6月25日(金)

ハートピアホール

前売り1000円/ 当日1200円

上映開始時間 10:00 14:30 18:30

上映時間 2時間6分

問い合わせ 0776-51-8800 (財)坂井市文化振興事業団