フォトアルバム

映画サークルお勧めの映画

HP内映画検索

アクセスカウンター

  • 一番多いお客様の県は?

    ジオターゲティング

« 2010年 6月号  | メイン | 散歩道① ~隠れて観る喜び~ »

2010年7月21日 (水)

新・身も心も 38 2010年7月号 ピアノ・レッスン

新・身も心も 38 


『ピアノ・レッスン』The Piano 93年


稲葉 芳明

 
 凛としたヒロイン、逞しいヒロイン、怖いヒロインがオーラを放つ三本の秀作。
まずは『17歳の肖像』。英国の作家リン・バーバーが青春時代のアヴァンチュールと挫折を振返った回想録を、ロネ・シェルフィグ監督が映画化しました。
1961年、ロンドン郊外。オックスフォード大学進学を目指す多感な女子高生ジェニー(キャリー・マリガン)は、保守的な家庭・学校での生活に飽きたらず、煙草を吸いながらシャンソンに耳を傾け、憧れの巴里に思いを馳せます。そんなジェニーの前に現れた、魅力的な年上の男デイヴィッド(ピーター・サースガード)。彼のエスコートで大人の享楽の世界を垣間見、ゾクゾクするような興奮を味わった彼女は、大人として日々自立していく実感を得るのですが・・・。
アカデミー賞主演女優賞にノミネートされたマリガンが断然素晴らしい。未知の世界に足を踏み入れたものの、大きな挫折を味わって人生の岐路に立たされる際に下す潔い決断、心の揺れ、精神的成長を彼女は見事に演じきっています。「凛とした」という言葉が本当によく似合う素晴らしい女優さんですね。
次いで、石井裕也監督『川の底からこんにちは』。『愛のむきだし』で数多くの映画賞を受賞した満島ひかり(みつしま・ひかり)が主演です。
父親との諍いで家を飛び出し上京したものの、何をやっても上手くいかないOL佐和子(満島ひかり)は、「しょうがない」が口癖の自称「しょせん中の下の女」。父が倒れたのでいやいや帰郷し、成行きで蜆のパック詰め工場の仕事を引き継ぎますが、パートのおばちゃんからは白眼視されるだけ。前半は、このどうしようもないダル~イ空気がオフビート調でユル~ク描かれていきますが、何といっても佐和子が開き直ってからの急転直下疾風怒濤の展開が圧巻です。
工場のおばちゃんたちを相手に、「あっ、すいませんけど、ちょっと聞いてください」と佐和子がきる啖呵。これはもう、『チャップリンの独裁者』に匹敵する圧倒的迫力の大演説ですね(大笑)。それに、木村水産の社歌を彼女が新たに書き下ろし、社員一同真剣に斉唱する場面の可笑しさったら!佐和子の逞しさに惚れ惚れし、見終わった後妙に元気ヤル気が沸いてくる活性剤映画です。
マリガン、満島と好対照の怖い怖いヒロインは『告白』主演の松たか子。本号が出る頃には、その怖さが知れ渡っているでしょうから詳述は避けます。一言付け加えれば、最後の最後に松が呟く一言!血も凍るような凄絶な台詞でしたね。
というわけで、ヒロインが印象的な新作三本を御紹介した後は、映画温故知新ということで『ピアノ・レッスン』をとりあげます。
監督・脚本ジェーン・カンピオン。主演ホリー・ハンター、アンナ・パキン、ハーヴェイ・カイテル。19世紀半ば、スコットランドからニュージーランドへ写真結婚で嫁ぐエイダ(ハンター)は、6歳の時から口がきけずピアノを言葉代わりにしています。彼女は夫との生活に満たされず、原住民に同化した男ベインズ(カイテル)と、いつしか激しい愛とエロティシズムの炎を燃え上がらせていきます。
封切時に本作を観た時、原初的風景に象徴されるダイナミズムと、匂い立つような官能性に魅了されました。荒々しい自然の中、内奥に抑圧してきエロスと生の力を解き放ち、本能の赴くままに生きようとするヒロイン像が実に鮮烈。加えて、マイケル・ナイマンの音楽も絶品でした。
美しく凛とし、周囲に埋没せぬ逞しさを備え、と同時にその余りの気丈夫さに畏怖心さえ感じさせるヒロイン。90年代を代表する傑作です。

コメント

コメントを投稿