フォトアルバム

映画サークルお勧めの映画

HP内映画検索

アクセスカウンター

  • 一番多いお客様の県は?

    ジオターゲティング

« 2010年11月 | メイン | 2011年3月 »

2011年2月

2011年2月28日 (月)

新・身も心も 46 

『セブン』Se7en 95

あのデヴィッド・フィンチャーが、「フェイスブック」創始者で「フォーブス」誌が世界最年少億万長者に挙げ「タイム」誌が「2010年の人」に選出したマーク・ザッカーバーグの物語を撮ると聞いて、これはとんでもないミスマッチでないかと大いなる疑問と懸念を抱いたのはぼくだけでないでしょう。しかし、これは全くの杞憂に終わりました。

フィンチャーが目指したものはありきたりのサクセスストーリーではなく、最新最高のSNSを創り出すことに取り憑かれた男の「闇の奥」、その執着と強迫観念(obsession)に鋭く切り込む心理サスペンスだったんですね、実は。意表を突く冒頭の長い長い会話場面が後でじわじわと効き、複数の時空間が同時進行する巧妙な作劇術(脚本アーロン・ソーキン)、随所にアヴァンギャルドな試みを炸裂させる音楽(トレント・レズナー)、流麗なカメラワークと巧みなカットバックを駆使した演出――紛れもなくこれはフィンチャーならではの映画でした。フィンチャー作品は全て封切時に観ていて、ぼくの御贔屓監督の一人でもあるので、此処でちょっとフィルモグラフィーを振り返ってみましょう。

デビュー作『エイリアン3』92(日本公開同年8月)は、R・スコット、J・キャメロンの後塵を拝したえらく地味な作品でしたが、続く『セブン』9596年1月)が映画ファンを震撼させます。

とんでもない「ゲーム」にマイケル・ダグラスが翻弄される不条理サスペンス『ゲーム』9798年2月)、再度ブラピと組んだサイコ・サスペンス『ファイト・クラブ』99(同年12月)辺りまでくると、過剰過激な物語と特異な映像造形の相乗効果スタイルが、フィンチャー印として広く認知されてきます。ジョディ・フォスターを迎えてハリウッド的娯楽作『パニック・ルーム』02(同年5月)を悠々と撮った後、サンフランシスコで実際に起こった連続殺人事件を映画化した『ゾディアック』07(同年6月)では、またも犯人および犯人を追う人間たちの「闇の奥」を鮮やかに抉ってみせました。三度ブラピと組んだ『ベンジャミン・バトン』0809年2月)は、全米公開初日1225月にZiegfeld Theater(マンハッタンのど真ん中にある由緒あるロードショー館)で観たのが懐かしい思い出です。さて、この8本の中から一本だけ選ぶとすれば・・・やはり『セブン』ですね。

やたら雨が降り、極めて暗い画調の中で陰惨極まりない猟奇殺人事件が連続するプロットに、当時『羊たちの沈黙』を連想した人も多かったでしょう。でも、あれはサイコパス・ムービーの先駆でしたが、J・フォスターが最後はサイコ野郎を見事仕留めるカタルシスがありました。単純なサイコも怖いですが、自己の行為を正当化する論理的整合性を備えたこちらのサイコはもっと恐ろしいです。

冗談抜きで、ぼくはこの映画を見ながら怖くて仕方がありませんでした。「七つの大罪」に準えながら連続殺人事件を犯すジョン・ドゥ(K・スペイシー)は、善良に慎ましやかに生きようとする無辜なる民を、純然たる邪悪の念で破滅させようとするデモニッシュな現代そのものであり、謂わばJohn Doeとは、現代社会を根底から蝕みつつある暴力とパラノイアが、人間という形で顕在化したものではないか――当時のぼくにはそう感じられたのです。

ユニークかつ独創的クレジット・タイトルから衝撃的結末まで息をつかせぬサスペンスの連続でしたが、いつ、どのような形で同じ悲劇が我が身に襲いかかるやも知れぬ、真綿で首を絞めるような怖さが此処には溢れていました。絵空事と切り捨てられない薄気味悪さが、見終えた後もいつまでも纏わりつく、正に映画史上に残る衝撃的作品です。

新・身も心も 45 

『スパイダーマン』Spider-Man 02

遅ればせながら、まず自分の2010年ベストテンを御紹介します。

∧ 日 本 映 画 ∨

1 告白

2 キャタピラー

3 おとうと

4 カラフル

5 悪人

6 川の底からこんにちは

7 ノルウェイの森

8 玄牝

9 トイレット

10  借りぐらしのアリエッティ

∧ 外 国 映 画 ∨

1 ハートロッカー

2 トイ・ストーリー3

3 白いリボン

4 インセプション

5 第9地区

6 瞳の奥の秘密

7 セラフィーヌの庭

8 (500)日のサマー

  キック・アス

10  NINE

 このベストテンには福井未公開作品が何本か入っていますが、今回はその中から『キック・アス』を取り上げます。

デイブ(アーロン・ジョンソン)はヘタレコミックオタクで見てくれ全く冴えない高校生。スーパーヒーローへの憧れが嵩じた挙句、既製品コスチュームを身にまとって自警団よろしくパトロールを始めたものの、特殊技能があるわけでもなくボコボコにされるだけ。ところがそのやられっぷりがYouTubeで配信され、ヒーローKick-Assとして一躍有名に。調子に乗った彼は、無謀にも麻薬ギャングに戦いを挑みますが、逆に絶体絶命の窮地に陥いり・・・。と、ここで登場するのがバットマンを彷彿させるBig Daddy(ニコラス・ケイジ)と、父から殺しの英才教育を授かったHit-Girl(クロエ・グレース・モレッツ)の二人組。ここからはヒーロー物パロディが一転して、バイオレントなアクションが炸裂しまくる超A級活劇へと変貌します。一見あどけない11歳のクロエ嬢が、ここまでやるか的に悪党どもをhitしまくるシークェンスは、血沸き肉躍り息を呑む凄まじさ!

名作コミック『スーパーマン』『スパイダーマン』『バットマン』にオマージュを捧げつつ、あの『ホット・ファズ』に匹敵する切れ味最高のアクション満載。加えて、真のヒーローとは何かを主人公が悟る∧青春映画∨的結末に笑いと感動の渦。伏線の張り方(防弾チョッキや秘密兵器)も唸るほど上手く、立ち見まで出た満員の劇場(テアトル梅田)は大いに沸きました(隣の女性は、ヒット・ガールの活躍ぶりに思わず何度も「カッコイ~!」と漏らしてましたヨ)。

というわけで、『キック・アス』福井公開を待つ間、その予習として本家本元の『スパイダーマン』を見ておきましょう。アクション映画としての迫力は十分ですが、青春映画としてもラブロマンスとしてもホントによく出来た物語です。是非三部作として見て下さい。『キック・アス』鑑賞の際、如何に巧みに『スパイダーマン』を下敷きにしているかがよく分かりますから(とりわけエンディングのレッド・ミスト)。

トビー・マグワイア主演シリーズは三部作で完結し、スタッフ・キャストを一新した“Spider-Man Reboot”が2012年に公開予定のようです。また、『ライオン・キング』のジュリー・テイモアが演出し、U2のボノ&エッジが音楽を担当、劇場内を実際に俳優が飛び回るという、ブロードウェイ史上最高の巨費を投じた超大作ミュージカル“Spider-Man: Turn off the Dark” も2月開幕というのですから、これはもうブーム再燃間違いなしです。

新・身も心も 44 

『ライトスタッフ』

The Right Stuff 83

年末回顧ということで、本・音楽・映画の三つの分野で最も印象に残った出来事を記してみます。

まず井上ひさし氏の死去。昨年1123日にアオッサで開催された「九条の会 第9回憲法セミナー」も体調不良で講演をキャンセルされましたが、まさか死に至るほど深刻な病状とは夢にも思いませんでした。

結果的に遺作となった戯曲『組曲虐殺』第二幕第八場で、作者は主人公小林多喜二にこう語らせます:「世の中にモノを書くひとはたくさんいますね。でも、そのたいていが、手の先か、体のどこか一部分で書いている。(中略)体ごとぶつかって行くと、このあたりにある映写機のようなものが、カタカタと動き出して、そのひとにとって、かけがえのない光景を、原稿用紙の上に、銀のように燃えあがらせるんです。ぼくはそのようにしてしか書けない。モノを考えることさえできません」――。生涯、生きるとは何か、何故全ての人が幸福になれないのか、という大きな問いを市井の人々の視点で考え続け、それを文学という形で表してきた井上ひさし氏。心より御冥福をお祈りします。

音楽ではやはりグスタフ・マーラー。生誕百五十年ということで、例年にもまして演奏会でとりあげられていました。ぼくは2月に交響曲第2番「復活」(ザ・シンフォニーホール)、7月に「大地の歌」(東京芸術劇場)、11月に第6番「悲劇的」(すみだトリフォニーホール)を聴きましたが、マーラー・イヤーの掉尾を飾ったのがマリス・ヤンソンス指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の第3番です(1122日、サントリーホール)。世界オーケストラ・ランキング第1位に輝くこのスーパー・オケ、弦はビロードの如く美しくしなやか、管はどこまでも澄んだ響き。ホール一杯に音を咆哮させつつも、端正な美しさは微塵も損なわれません。6楽章から成るこの大作を実演で聴くのは4度目ですが、史上最高の名演。陶酔と至福の2時間でした。

さて、最後に映画のお話ですが、今年は無論「午前十時の映画祭 何度見てもすごい50」でキマリ!往年の名作洋画を全国25カ所のシネコンで1日1回連日午前十時から上映するこの企画、動員は主催者の予想を遥かに上回り大成功。今年上映された50本は「Series 1/赤の50本」と題され新たな25館で続映、そして「Series 2/青の50本」として新規に50本が上映されます。

この素晴らしい企画を横目で睨んで切歯扼腕していた福井の映画ファンの皆様、お待たせしました!来年2月5日より、鯖江アレックスシネマさんが「赤の50本」をスタートして下さいます(拍手!)加えて、東京日比谷のTOHOシネマズみゆき座はRS館から∧名画座∨に興行形態を改め、終日「赤の50本」を上映するという朗報も飛び込んできました。TVドラマ劇場版、コミック映画化、アニメシリーズ、人気タレントを揃えて良しとする安易な企画等々で、劇場に足を運ぶ機会が最近激減したとお嘆きのコアな映画ファン諸氏にとって、これこそ正に旱天の慈雨、メシア降臨!全作品オリジナルニュープリント、しかも入場料は一般千円・学生五百円と嘘みたいに格安。

というわけで、今回の福井上映で楽しみにしている一本が『ライトスタッフ』。勿論、封切時(1984年9月24日)に東映パラス(現福井シネマ2)で観てます。でもね、約30分短かった日本仕様短縮版ではなく、今回は何と193のオリジナル・ノーカット版で上映。一足早くお年玉を山ほど貰ったようで、今からドキドキワクワク興奮してます!

「時代を変えた一本は、

いまのあなたも、きっと変える。」

新・身も心も 43

『2001年宇宙の旅』

    2001: A Space Odyssey 68

10月から11月にかけて幾つかコンサート・芝居に足を運びました。

先月号で触れた山下達郎のツアーは追加公演が決定し、ぼくもダメモトで11月4日東京公演を申し込みました。運よく当選しましたが、公演十日前にチケットが届いて眼が点になりました。何と、NHKホール最前列ド真ん中の超特等席だったのです!1835分に客電が落ち終演は2205分、神戸公演を凌ぐ3時間30分怒涛の大熱演で、その夜は興奮の余り寝付けませんでした(笑)。

その数日前に京都劇場で観劇したのが劇団四季『春のめざめ』(1030日夜の部)。2年前クリスマス時にNYを訪れた際、Eugene O’Neil劇場で観た“Spring Awakening”は、その斬新な発想と演出、パッションが迸る唄・演技、観客の熱狂ぶりに圧倒されました(ぼくが観た数ヵ月後にはクローズしてしまったので、実に幸運)。幕が上がったままの舞台には左右両端にも椅子が並べられ、そこにも観客が座るので吃驚。劇団四季が日本公演を開始した時は是非一度この「ステージシート」から観てみたいと思い、今回その願いが叶いました。文字通り手を伸ばせば届く至近距離で、役者の演技を凝視する――生まれて初めての体験でしたが、ブロードウェイで観た時とはまた別の興奮と感動を味わいました。

この他に劇団☆新感線『鋼鉄番長』(サンシャイン劇場)や新日本フィルハーモニー演奏会「マーラー交響曲第6番」(すみだトリフォニーホール)を楽しみましたが、それに加えて究極の映画体験をしました。∧午前十時の映画祭∨『2001年宇宙の旅』です(1030日、TOHOシネマズ二条)

宇宙旅行が日常的なものとなった2001年、月面で謎の物体が発見される。この石碑のような黒い物質(モノリス)は、木星に向かって強烈な電波を放射しており、人類はその謎を解くべく探査機ディスカヴァリィ号を木星に派遣するのだが・・・。

日本公開は68年4月11日、京橋に威容を誇ったシネラマの大劇場テアトル東京にて。その十年後にリバイバル公開が実現し、ぼくは79年2月3日初回にテアトル福井(現テアトルサンク1)で観ました。名のみ聞いていた映画史上の傑作に、遂に大スクリーンで遭遇した時の衝撃と感動!その後、OS劇場(大阪のシネラマ劇場)が91年に閉館する際の特別上映にも足を運び、今回は19年ぶりの再見となります。

人類の出現と進化をマクロ的に俯瞰した壮大なスケール。人間の存在を形而上学的に考察した深遠で哲学的なアプローチ。人類をより高い次元に導くモノリスという極めて不可解な物体の提示。猿が抛り投げた骨をスローモーションで捉え、それが一瞬の裡に宇宙船に変わる奇跡的モンタージュ。完璧な筈のスーパーコンピューターHALの反乱。スターゲートに突入して以降の光と音のサイケデリックな氾濫。三度(冒頭、モノリスが猿に啓示を与える場面、最後の室内場面)鳴り響くR・シュトラウス『ツァラトゥストラはかく語りき』の壮絶な効果。宇宙船の飛行場面に流れるJ・シュトラウス『美しき青きドナウ』の筆舌に尽くしがたい優美さ。

生まれてこのかたぼくは四千本以上の映画を劇場で観てきましたが、本作は、初めて出会って以来30年以上にわたって「我が生涯のベストワン」に位置しています。CGが全く存在しなかった時代に創り上げたこの映像のリアリティは驚異の一言で、(G・ルーカスの言うように)SF映画の最高峰として、今でも多くの人を魅了し深遠な問いを投げかけ続けています。