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2014年2月11日 (火)

アカデミー賞で思いだすこと

  アカデミー賞のニュースが目につくようになると思い出すことがある。

もう5年前になるが、私が関係する豊地域に伝わる3つの民話を、短い映画に撮った。スタッフも役者も地域に住む素人ばかりであった。その作品を東京ビデオフェスティバルに応募したところ、1本が佳作に選ばれた。福井県から入賞したのは22年ぶりで、県内のいくつかのマスコミが大きく取り上げてくれた。

 受賞できたのはシナリがよかったとか(作者は私)、役者の演技が素晴らしいとか(役者を捜してきたのも私)、何か優れたものがあったからだと思っていた。だが取材を受けるうち、マスコミの人から入賞の理由を知らされた。フェスティバルの主催者は、各マスコミに受賞の理由を明かして報道を要請していたのだ。

 さて、受賞の理由は、地域に伝わる民話を映像で残したのがよかったというものだ。これを聞いて、入賞の喜びで膨らんでいた胸が少ししぼんだ。芸術性はなかったのか。作品そのものに、魅力はなかったのかと。

 そのうち、マアいいか。みんなが喜んでくれるのだから、と思いなおした。時はアカデミー賞にノミネートされた作品が、テレビのニュースで流れるころであった。そこで、祝賀会のアトラクションとして、1回きりの豊アカデミー賞を創設することを思いついた。賞をあげたい人が二人いた。主役でも脇役というほどでもない、火葬場のまわりで幽霊の衣装を着て踊ってくれた女性である。薄暗い杉木立ちに囲まれて建つ朽ちかけた火葬場。そのまわりを白い衣装と、頭に三角布をつけてゆっくり踊る老女たち。幻想的な場面として、なくてはならなかった。

 撮影が終わったとき、彼女たちは言った。「今度はドザエモンでもいいから、もっと出番がほしい」と。どんな役でも演じるのは面白いようだ。

 祝賀会当日、会場が盛り上がっているところで、いよいよ豊アカデミー賞の授与である。役者さん一人ひとりを紹介し、発表である。誰が受賞するのか一部の人しか知らない。発表するのは3作品の監督だ。おどけたふりで封筒に鋏を入れる。役者さんたちは緊張と期待のまなざしで見つめている。お祝いにかけつけてくれた人たちも息をつめている。

 さあ、発表。監督に呼ばれた女優さんは、両手で胸を抑えながら、レンタルで借りた赤い絨毯を踏んで舞台へくる。「豊アカデミー賞女優賞」と、二段に刻んだ盾を受け取っても、感想も言えないほどびっくりしていた。

 祝賀会が終わってから、二人の女優さんは「こんな嬉しいことはない。死んだらこの盾を棺おけに入れてもらう」と口をそろえて言った。アカデミー賞の発表があるころになると、決まって思いだす。「ドザエモンでもいいから、もっと出番がほしい」。ドザエモンの役もなく、彼女たちの女優体験は終ってしまった。だが、一生のうちの点のような時間を女優として生きたことは楽しかったのだろう。素人映画も悪くない。アカデミー賞発表のころになると、彼女たちの幽霊の踊りを思い出す。

(中島美千代)














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