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2014年7月 6日 (日)

新・身も心も 85 『天使にラブ・ソングを』(Sister Act, 1992)

 この一ヶ月で、芝居を四本観ました。観劇順に記しますと、劇団☆新感線『いのうえ歌舞伎《蒼の乱》』(梅田芸術劇場メインホール 5月17日夜の部)、『シスター・アクト~天使にラブ・ソングを~』(帝国劇場 6月7日昼の部)、コクーン歌舞伎第十四弾『三人吉三』(シアターコクーン 6月7日夜の部)、青山円劇カウンシルファイナル『赤鬼』(青山円形劇場 6月8日昼の部)――です。

いずれも、「芝居」ならではの自由な表現技法と想像力・創造力およびlive performanceならではの臨場感・スリルを存分に味わわせてくれる素晴らしい舞台ばかりでしたが、この四本の中では最も映画との繋がりが強い『シスター・アクト』を、今月は御紹介しましょう。

ウーピー・ゴールドバーグ主演で、世界的に大ヒットした映画『天使にラブ・ソングを…』(Sister Act, 1992)。これを舞台化(ミュージカル化)するに際しては、ゴールドバーグ自ら共同制作者として企画に深く関わり、2009年にロンドンでワールド・プレミア。2011年にはブロードウェイで幕を開けて大ヒット、トニー賞5部門ノミネートの成功を収めました。

元(原作)となった映画は日本でも大変好評を博し、この映画が契機となって「ゴスペル」という言葉と音楽が人口に膾炙するに至りましたので、待望の日本公演が実現したと言えるでしょう。

 

まずは、映画の物語のおさらいです。

――ネヴァダ州リノのカジノで歌うクラブ・シンガー、デロリス=ヴァン・カルティエ(ウーピー・ゴールドバーグ)は、一帯を仕切る顔役で自分の愛人でもあるヴィンス(ハーヴェイ・カイテル)が、組織の裏切り者を殺す現場を偶然目撃。慌てふためいて警察へ駆け込んだデロリスを、サザー警部(ビル・ナン)はサンフランシスコの修道院に匿うことにします。新米尼僧シスター・クラレンスとして修道院に迎えられたデロリスは、厳格な修道院長(マギー・スミス)の高圧的態度にも何ら臆することなく、シスター・パトリック(キャシー・ナジミー)やシスター・ロバーツ(ウェンディ・マッケナ)ら若い尼僧たちとすぐに打ち解け、ラザラス尼(メアリー・ウィックス)から聖歌隊のリーダーを引き継ぎます。歌のレパートリーにソウルやロックのナンバーを加えると、聖歌隊は以前とは見違えるほど生き生きしたコーラス隊に変貌し、周囲が驚くほどの実力と人気を博していきます――。

舞台版の物語もほぼこれを踏襲しています(ミュージカル版は舞台がリノからフィラデルフィアに変更になっていますが、実はこれがミソ)。では、映画版と舞台版の最大の違いは何か?

それは、映画版が既存曲を挿入していたのに対し、ミュージカル版はアラン・メンケン&グレン・スレイター(舞台版『リトル・マーメイド』を手掛けた名コンビ)が、全曲新たに書き下ろしていることです。白人のアラン・メンケンが、1977年のフィラデルフィアを舞台にしたソウル・ミュージックのノリと、伝統的ミュージカルのハーモニーや旋律を巧みに融合しているところが、音楽ファンにはたまらない大きな聴きどころなのです。

 筆者が観た日はデロリス=瀬名じゅんでしたが、蓮っ葉な感じは余り無く、スター然とした華やかさが自ずと発露します。ただオリジナル・ロンドン・キャストのPatina Millerと比較すると、やはり声が細く感じられてしまいますが、まあこれはないものねだりというものでしょう。脇役で一番光っていたのは鳳蘭。修道院長が唄うナンバーはしっとりと歌い上げる楽曲が殆どですが、しみじみとした情感を感じさせ、「歌」で「物語」を深く語る力はさすがと深く感服致しました。また、デロリスと幼馴染である警官エディを演ずる石井一孝は、一途な純真さを嫌みなく感じさせ好感が持てます。あとシスター役の春風ひとみと浦嶋りんこは、歌も演技も踊りも安心して見ていられます。

でも、やはりこのミュージカルの真の主役は、メンケン&スレイターが書き下ろした楽曲に乗せ、無我夢中で歌い踊るシスター達です。禁欲的な生活を送るシスター達が、デロリスに感化されて別人のように陽気にかつド派手に歌い踊るというのは、不謹慎と言うか、現実には到底有り得ない設定なのですが、音楽の力によって人がどんどん変わっていく――自己の真の姿に目覚めてくる――躍動感が、この見え見えの嘘を観客に信じさせます。テーマソング的に何度も歌われる“Take Me to Heaven”、第2幕冒頭の素晴らしいシークェンス“Sunday Morning Fever”、ずっと内気だったシスター・メアリー・ロバートが、デロリスとの交流で脱皮して新たな道を歩まんとする心境を歌い上げた感動的ナンバー“The Life I Never Led”(ただし、ラフルアー宮澤エマはやや力不足)等々、『リトル・マーメイド』『美女と野獣』に匹敵する多彩で情感に訴える緻密なスコアが、観る者をごく自然に感動させます。

終演後、近くに座っていた女性二人が「演じている人たちが一番楽しいでしょうね」と言葉を交わすのを耳にしました。まあ、ミュージカルに限らず芝居というものは「観るは天国、演ずるは地獄」の世界ではありますが、演じている人たちが皆キラキラ輝き、観客以上に役者達が楽しんでいると納得させるだけの力と爽快感を、このミュージカルが存分に放っていたのは間違いありません。

映画のファンだった方は、必見! (稲葉 芳明)

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