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2014年11月21日 (金)

新・身も心も 88 『ジャージー・ボーイズ』とイーストウッド

稲葉芳明

「クリント・イーストウッド監督・製作の『ジャージー・ボーイズ』の試写を観せていただき、ぶっ飛んだ。正直なところ、イーストウッドがアクション、ロマンス、伝記ものなどは撮れるとしても、まさか〈ミュージカル〉をオーソドックスに撮れるとは思わなかったのである」――こう絶賛するのは、作家の小林信彦氏です(『週刊文春』連載コラム「本音を申せば」第809回)。

1951年、ニュー・ジャージー州、イタリア系移民が集まる貧しい町ベルヴィル。ここで理容見習いをしているフランキー(ジョン・ロイド・ヤング)は、その驚異的歌声で知る人ぞ知る存在。トミー(ビンセント・ピアッツァ)とニック(マイケル・ロメンダ)が組んでいるバンドに入ったもののなかなか芽が出なかったが、新メンバーにボブ(エリック・バーゲン)を迎えてからはグループにも幸運の女神が微笑みかけ・・・。

60年代米国音楽シーンを席巻したFrankie Valli and the Four Seasonsを主役とした実録サクセスストーリー+メンバー四人の絆と別れ+マフィアとの繋がりを含めた音楽業界裏話に、ミュージカル的楽しさとダイナミズムをたっぷり盛り込んだ、実に緻密に組み立てられたドラマです。フランキー・ヴァリを始め、先日死去したボブ・クルー(The Four Seasonsの作詞を手掛けた名プロデューサー)等1960~70年代米国音楽シーンに知識と馴染がある人ほど、より奥深く堪能できると思います。全篇息もつかせぬ見事な作劇術ですが、歌われる楽曲を少しだけ御紹介しましょう。

ボブが15分で一気に書き上げ、人気TV番組「アメリカン・バンドスタンド」で披露すると一大センセーションを巻き起こした“Sherry”。次いで“Big Girls Don’t Cry”(62年)、“Walk Like a Man”(63年)と、三作連続で全米ナンバーワンヒットを放つ場面は、本編のハイライトの一つ。その後「エド・サリヴァン・ショー」でライヴ演奏する “Working My Way Back to You”(66年9位)を含め、映画中盤はヒット曲のオンパレードです。

映画も後半になると、グループが空中分解したりフランキーの家族に不幸があったりと、重く暗い展開になるのですが、その暗雲を一気に吹き払うかのように、あの超名曲“Can’t Take My Eyes Off You”(67年2位)をフランキーが熱唱する場面は、もう感動の嵐。1990年の再結成場面で歌われる“Rag Doll”(64年1位)と“Who Loves You”(75年3位)では、イーストウッドが操る夢のような映画魔術に恍惚とさせられます。さらにさらに、カーテンコールまで用意してあるんです。エンド・クレジットが始まると、まずアカペラ・ヴァージョン“Sherry”が唄われ、そこから一気に“December, 1963 (Oh, What a Night)”(75年1位)へと繋げていくシークェンスには、感涙に咽びながら完全に昇天してしまいました。

 

 映画を観ている間も見終えた後も、実に幸福な時を過ごすことが出来ましたが、ここでふと、クリント・イーストウッド御大に改めて思いを馳せてみたくなりました。ぼくが初めて映画館で観たイーストウッド作品は『ダーティハリー2』(1973年)だったと思いますが、正直70年代の頃は、監督イーストウッドにはさほど強い興味関心を抱いていませんでした。遅まきながら監督としての優れた才能に気付いたのは、『ブロンコ・ビリー』を観た時。日本では気の毒な位不入りだったこの映画、カウボーイとしての矜持と誇りを、詩情豊かに歌い上げた秀作でした。

 40年以上にわたって彼の映画に接してきて、自分にとってイーストウッド映画の魅力って何だろうと自問自答してみて、一言で答えれば〈男気〉となりますかね。溝口健二がジョン・フォードを評して言ったかの有名な言葉を借りれば、「男騒ぎのうまい人」なんです。

 孤高の道を歩むことを――ことさら虚勢を張って強がったり、あるいは怨念を抱くこともなく――己の運命と虚心坦懐に受け入れ、しかし、矜持と誇りは決して忘れることなく悠然と歩みを進める姿に、男のダンディズム・格好良さを感じて惚れこんでしまうのです。演出について言えば、これみよがしのテクニックや派手なカメラワークには目もくれず、登場人物たちが醸成する人生ドラマをじっくりと掘り下げる視点の確かさに、ほとんど畏怖の念すら覚えます(イーストウッドは、映画製作に最も重要なのが脚本、次がキャスティングと述べていますが、成程と納得させられます)。

 マカロニ・ウェスタンの代表作『荒野の用心棒』に主演したのが1964年、自身の製作会社マルパソ・プロダクションを立ち上げたのが1967年、『恐怖のメロディ』で監督デビューを果たしたのが1971年。半世紀に亘り、監督業と役者業の二足の草鞋を履いて生み出してきた名作・傑作の数々から私的ベストテンを選んでみますと、以下のようになります。

『ダーティハリー』(Dirty Harry 1971年、主演)

『ブロンコ・ビリー』(Bronco Billy 1980年、監督・主演)

『バード』(Bird 1988年、監督・製作)

『許されざる者』(Unforgiven 1992年、監督・製作・主演)

『ミスティック・リバー』(Mystic River 2002年、監督・製作)

『ミリオンダラー・ベイビー』(Million Dollar Baby 2004年、監督・製作・主演)

『父親たちの星条旗』(Flags of Our Fathers 2006年、監督・製作)

『硫黄島からの手紙』(Letters from Iwo Jima 2006年、監督・製作)

『グラン・トリノ』(Gran Torino 2008年、監督・製作・主演)

『ジャージー・ボーイズ』(Jersey Boys 2014年、監督・製作)

次点『恐怖のメロディ』(Play Misty for Me 1971年、監督・主演)

『人生の特等席』(Trouble with the Curve 2012年、製作・主演)

 

 どんな大監督であっても、70歳の声を聞く頃になると次第に枯れてきて、「老い」を感じさせる例が多い中で、老年の域にかかってから『ミリオンダラー・ベイビー』『父親たちの星条旗』『グラン・トリノ』と傑作を連打する創り続ける仕事ぶりは、超人的というか怪物的ですね。これからも、タフで頑固な〈親父〉として、ますます意気軒昂として映画を作り続けて下さい!

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